在庫管理システムは、ECサイトや店舗が商品を把握し管理するのに役立ちます。ビジネスの規模に関わらず、需要に応じた在庫を過不足なく確保し管理するために導入を検討している人もいることでしょう。
在庫管理ソフトを導入すれば、在庫維持だけでなく顧客への製品出荷までのプロセスの円滑化も期待できます。在庫管理における手動での作業を減らすことで、時間を節約しヒューマンエラーのリスク軽減も見込めます。また、Shopifyストアや会計ソフトなどと連携することで管理の一元化を図れるアプリもあります。
この記事では、おすすめの在庫管理システムを比較し、自社に合ったものを選ぶ際のポイントをご紹介します。
在庫管理システムとは
在庫管理システムとは、企業や店舗が所有する商品や資材などの在庫管理を行うシステムです。手作業での在庫管理は、数え間違いや入力ミスといったヒューマンエラーが避けられません。在庫管理システムやアプリを導入することでこれらの課題を解決し、リアルタイムで正確な在庫数の把握することが可能となります。
多くの商品を扱うEコマース企業において、在庫管理システム活用は在庫切れや過剰発注を回避できるだけでなく、最短納期での注文フルフィルメント提供にも役立ちます。さらに在庫データの一元化は、複数の販売チャネルを運営する際にも役立ちます。在庫管理システムを使えば、複数の倉庫や実店舗など、在庫を複数箇所に分けて保管している場合でも正確な在庫数と保管場所を把握できます。
在庫管理システムの主要な機能
在庫管理システムのもつ主な機能は以下の7つです。
1. 在庫可視化
在庫がなくなりそうなタイミングで管理者に通知したり、卸売業者への注文を自動化したりできます。常に必要な在庫数を確保することで、機会損失を削減できます。
2. 在庫管理
保管スペースを最適化し、在庫管理に必要なコストを割り当てることができます。
3. マルチチャネル販売との連携
在庫管理システムを使えば、複数の販売チャネルの在庫データを同期することができるため、在庫管理の一元化が可能です。
4. レポートと分析
レポートと分析ツールを備えているため、商品ごとの販売量がひと目でわかります。またデータに基づいた分析を今後の在庫管理に役立てられます。
5. 販売量予測
過去のデータを元に、特定の期間内の販売量予測を行うことが可能です。
6. 注文書作成
注文書の送信機能のある在庫管理システムを使用すれば、注文書を自動作成しサプライヤーに発送できます。
7. 複数保管所のデータ同期
小売店や各倉庫の在庫データを同期することが可能なため、常に適正な在庫数を把握できます。
在庫管理システムを利用するメリット
1. 機会損失を防げる
アメリカの調査会社IHLの調査(英語)によると、在庫切れによる機会損失や過剰在庫により小売業が失う売り上げは毎年推定3,490億ドルにのぼるとされています。これらの数字からも、顧客の需要に適した在庫管理は企業にとって売り上げを確保するのに重要であることがわかります。
近年登場したRFID(Radio Frequency Identification : 無線周波数識別)タグを使った在庫管理を利用すれば、在庫の動きをリアルタイムで監視できるようになり、在庫切れを25~30%程度削減(英語)することが可能です。在庫管理システムにより製品の入荷時や販売時、返品時に情報が更新され、即時に在庫数を知ることができます。
2. 在庫ロスを減らせる
複数の倉庫を利用したり実店舗を構えたりする場合、在庫の所在と数を正確に把握することで在庫ロス削減につながります。最新情報がリアルタイムで更新されるため、在庫の所在情報が可視化され、複数チャネルでの販売状況もわかります。
また、徹底した追跡システムがあることで、破損在庫が適切に記録されなかったり、大規模倉庫で在庫が紛失してしまったりすることを防げます。国内外のさまざまな拠点に倉庫を置いている場合も、個々の品目追跡の時間を短縮できます。
3. 保管費用を削減できる
商品を倉庫で保管する際にかかる保管費用についても、在庫管理システムの活用で削減することが可能です。正確な在庫管理で、商品ごとの販売数がひと目でわかるようになります。販売数が少ない商品については在庫管理における最小の管理単位であるSKUを減らし、倉庫内のスペースを確保しましょう。代わりに販売量の多い在庫の保管にスペースを使用することで、空間の有効活用が実現します。販売数の少ない製品在庫を減らして倉庫を縮小するという方法もとれます。
4. 3PL会社との連携が円滑になる
荷物の輸送や在庫管理などの物流業務を第三者に委託する3PLを導入している事業主は、在庫管理システムと連携することで円滑なコミュニケーションを図れるようになります。在庫管理は需要の変化やシーズン商品の取り扱いによる在庫変動、サプライチェーンの課題の変動などにより、柔軟な対応が求められることも少なくありません。一元化された在庫管理システムを導入すれば3PL業者と販売業者がいつでも最新情報にアクセスできるようになり、在庫ニーズを共有しやすくなります。
在庫管理システムの3つの提供形態
在庫管理システムの提供形態には、以下の3つがあります。
- クラウド型:ネットワーク上のサーバーに設置されたシステムに、利用者がインターネットを介してアクセスする形態です。運用やメンテナンスはサービス提供会社が行うため初期費用が抑えられ、短期間で導入できます。
- オンプレミス型:システムを自社サーバー内に設置し、自社で運用・管理する形態です。自社環境に合わせてカスタマイズできる反面、導入コストや開発期間が必要になり、運用開始後も社内でのセキュリティ対策やデータ管理が必要になります。
- パッケージ型:専用のソフトウェアを購入しパソコンにインストールして使う形態です。インストールしたパソコンでのみの使用が可能で、大人数での管理には不向きです。
在庫管理システムの比較10選
1. ロジクラ
提供形態:クラウド型
料金:
- Liteプラン:14,800円/月(月契約)、12,800円/月(年契約)
- Premiumプラン:49,000円/月(月契約)、40,000円/月(年契約)
- Enterpriseプラン:要相談
お試し利用期間の有無:あり。14日間無料。
ロジクラは初期費用が抑えられるため、中小企業や個人事業主も手軽に導入できます。専門知識がなくても使える機能が充実しているほか、iPhoneで検品作業ができるアプリも提供しています。ロジクラのShopifyアプリもあり、Shopifyを始めとしたECカートやモールとの連携機能もあります。
2. zaico(ザイコ)
提供形態:クラウド型
料金:
- ミニマムプラン:3,980円/月
- ライトプラン:9,800円/月
- フルプラン:39,800円/月
- エンタープライズプラン:100,000円/月
お試し利用期間の有無:あり。31日間無料。
事業規模に応じてプランを選べるzaicoは、直感的に操作できる使いやすさが特徴です。スマホから商品をスキャンできるため、初めて在庫管理アプリを使用する人にも適しています。選択したプランに十分なユーザー数がない場合にも、追加料金を払えばユーザー数を増やすことが可能です。
3. logiec(ロジーク)
提供形態:クラウド型
料金:基本料金10,000円/月+従量課金制(月あたりの出荷件数100件超の場合)
お試し利用期間の有無:要問合せ
logiecは、在庫管理システムを備え、オンラインショップや注文管理システムとの連携により、物流全体を統合的に管理する流通統合ツールです。はぴロジのアプリを使えばShopifyとの連携も可能で、在庫管理業務の一元化を目指す人にもおすすめです。フルフィルメントサービスも提供しています。
4. GoQSystem(ゴクーシステム)
提供形態:クラウド型
料金:
- フリープラン:0円/月+初期費用0円
- 受注管理プラン:15,000円/月+初期費用30,000円
- 受注・在庫連携管理プラン:29,800円/月+初期費用40,000円
- 受注・商品・在庫連携管理プラン:44,800円/月+初期費用50,000円
- 受注・商品・在庫連携出荷管理プラン:64,800円/月+初期費用100,000円
お試し利用期間の有無:あり。有料プラン20日間無料。
注文数が増えても定額料金が適用されるため、売上が伸びても同じ使用料で継続して利用できます。メールだけでなく電話やLINEでの緊急対応も行っているため、初めて在庫管理システムを導入する事業主にも安心です。ShopifyのGoQSystemアプリもあります。
5. アラジンオフィス
提供形態:パッケージ型、オンプレミス型、クラウド型
料金:要問合せ
お試し利用期間の有無:要問合せ
在庫管理から販売管理、生産管理も可能なアラジンオフィスは、業種特化型パッケージを多く取り扱っています。オプション機能も豊富で、ビジネスモデルや業界に合わせて利用ができます。
6. ネクストエンジン
提供形態:クラウド型
料金:3,000円/月+従量課金制(受注件数や機能の追加により追加料金が発生)
お試し利用期間の有無:あり。30日間無料。
ネクストエンジンはECの現場から生まれた在庫管理システムで、注文の自動取り込みや受注処理の自動化、出荷後の自動メール対応など、EC運営の業務効率化に必要な機能が揃っています。またメルマガ自動運用機能も備えており、購読者が関心のある商品を自動でメルマガ配信できます。
EC事業者はさまざまなシステムと連携し、アプリで機能をカスタマイズ・追加することも可能なため、事業規模が変わっても継続して使えます。
7. ロジザードZERO(ゼロ)
提供形態:クラウド型
料金:要問合せ
お試し利用期間の有無:要問合せ
クラウド倉庫管理システムサービス会社として20年以上のノウハウを蓄積しているサービスで、オムニチャネルやD2Cなどにも柔軟に対応できます。ロジザードZEROのShopifyアプリもあるため、サイトと連携して商品マスタ情報や注文情報、出荷実績データを同期できます。
8. コマースロボ
提供形態:クラウド型
料金:
- Starterプラン:5,000 円/月
- 自動出荷プラン:10,000円/月+従量課金制
- SCMプラン:30,000円/月+従量課金制
お試し利用期間の有無:要問合せ
コマースロボは受注から出荷までを自動化できる、EC事業者向けの受注管理システムです。処理ロボットを使って受注処理やEC連携、データ変換などを自動化できます。コマースロボのShopifyアプリもあり、Shopifyサイトを管理している場合には、在庫のリアルタイム管理と適切な在庫数の維持にも役立ちます。
9. TEMPOSTAR(テンポスター)
提供形態:クラウド型
料金:
- スタータープラン:1,650円/月
- クイック導入プラン:11,000円/月+従量課金制
- スタンダードプラン:11,000円/月+従量課金制
- カスタマイズプラン:要問合せ
お試し利用期間の有無:あり。30日間無料。
TEMPOSTARは、ネットショップや倉庫が複数ある場合に便利な一元管理システムです。起業直後などの規模が小さい段階では基本機能のみで運用し、ビジネスが成長したら他システムとも連携ができるようカスタマイズすることが可能です。システムの初期設定をオンラインでサポートしてくれるサービスや、電話・メールでのサポートも充実しています。Shopifyとの連携も可能です。
10. 在庫スイートクラウド
提供形態:クラウド型
料金:
- 棚卸:29,000円/月~+初期設定費用150,000円
- Lite:30,000円/月~+初期設定費用300,000円
- Pro:4,000円/月~+初期設定費用300,000円
お試し利用期間の有無:あり。30日間無料。
在庫スイートクラウドは、必要な機能や用途に合わせて3つのプランから選べるクラウド型の在庫管理システムです。ニーズに合わせてハンディターミナルやスマートフォンなどの利用デバイスを選べ、在庫数や拠点数も無制限に追加可能です。料金は最大ユーザー数により変動します。
自社に合った在庫管理システムを見つけるポイント
1. 搭載機能が自社のビジネスモデルに適しているか確認する
まずその在庫管理システムが、自社のビジネスモデルに適しているかを確認しましょう。小規模オンラインストアの事業者向けシステムや、マルチチャネル戦略を行う大規模企業向けシステムなどがありますので、自社の事業に合わせて選んでください。
自社のビジネスモデルに合ったシステムを見つけたら、次に必要な機能が搭載されているかを確認します。リアルタイム更新やマルチチャネルサポート、需要予測、POS統合など提供される機能はシステムにより異なります。例えば、多くの類似商品を取り扱う事業主の場合、注文エラーを避けるためにピッキング画面に商品画像が表示できるシステムを必要とするということが考えられます。また、小規模Eコマースサイト運営者で、顧客の第一印象を重要視することから、注文が正しく発送されているかを確認できるシステムを必要とする場合もあるでしょう。
2. 予算を決める
初期費用や運用コストはシステムにより大きく異なるため、予算を決めておく必要があります。一般に、費用は処理できる注文数に比例する傾向にありますが、カスタマイズをしたり機能を追加したりするとさらに費用がかかります。予算を決める際には、以下のようなコストを忘れずに含めるようにしましょう。
- インストール費用
- セットアップ費用
- スタッフトレーニング
- 他システムからの移行費用
- 倉庫や店舗に必要なハードウェア
予算を決める際には、ビジネスの成長も考慮に入れましょう。現時点では不要な機能であっても、近い将来に必要になる可能性があります。将来性も加味した予算を立て、適切な在庫管理システムを導入すれば優れた顧客体験を提供することにもつながるでしょう。
3. 既存システムと連携できるか確認する
既存のシステムと連携できる在庫管理システムを導入しましょう。在庫管理システムは、使用中のシステムを補完したり置き換えたりするものであるため、ECサイト管理者が現在利用しているプラットフォームと連携ができる必要があります。店舗を持つ小売業者の場合、在庫管理システムとPOSが同期できれば、商品が販売されるごとに在庫管理システムが在庫数を自動的に更新してくれます。倉庫管理システム(WMS)の拡張を予定している場合には、在庫管理システムと倉庫管理システムを連携できるか確認しましょう。
4. 操作性を確認する
従業員が簡単に操作できるかどうかも重要な要素の一つです。高度な機能を多数備えているシステムだったとしても、複雑すぎて使用できなければ意味がありません。ユーザーフレンドリーで操作性の良い在庫管理システムを選びましょう。従業員へのトレーニングにかかる時間やコストを考えることも重要です。
まとめ
在庫管理システムとは、商品や資材などの在庫管理を行うシステムのことです。在庫切れを防ぐだけでなく、Shopifyサイトや他のアプリと連携することで在庫管理の一元化を図れます。
最適な在庫管理システムを選ぶには、自社のビジネスモデルに合った機能があるか、予算は適しているか、既存システムと連携できるか、そして操作性は良いかと言った点を確認しましょう。事業に合った在庫管理システムを導入すれば、リアルタイムで正確な在庫数の把握ができるだけでなく、データに基づいた分析を通して今後の在庫管理に役立てることも可能です。さらに、フルフィルメントを合理化することで、時間や人件費の節約も期待できるでしょう。
今回ご紹介した在庫管理システム比較を参考に自社に合ったアプリを選び、過不足のない在庫数維持と作業効率化を実現しましょう。
在庫管理システムに関するよくある質問
在庫管理システムとは?
在庫管理システムは、企業などが持つ商品や資材などの在庫を正確に管理するためのシステムです。在庫の入出庫や数の確認などが自動化され、在庫管理の効率化やコスト削減、顧客体験の向上などが実現できます。
在庫管理システムの導入にかかるコストは?
在庫管理システムの初期費用は、クラウド型の場合は一般に0~10万円程度です。自社内にシステムに必要なサーバーや機器、ソフトウェアを所有するオンプレミス型の場合は300万~1000万円程度が相場です。これらのコストは事業規模や管理する在庫数、必要な機能などによって異なり、このほかにランニングコストも必要になります。
在庫管理システムは自作できる?
自作できます。インターネット上にある在庫管理表のテンプレートを活用したり、エクセルやスプレッドシートで自社のニーズに合わせて在庫管理システムを構築したりすることが可能です。
ただし、手動入力によるヒューマンエラーの発生リスクがあるため、正確な在庫数管理には自動化されたシステム導入が適していると言えます。
在庫管理にAIを活用できる?
可能です。在庫管理にAIを活用すると、業務の効率化を図れます。センサーやカメラなどのAIデバイスを使って自動での在庫確認と管理ができます。過去の売上データを参考に最適な発注量や在庫量を算出するといったことも可能です。ただし、AIを使った在庫管理システム導入には膨大な自社データやAIシステムの維持や管理ができる人材が必要なため、初期費用や運用コストがかかる傾向にあります。
文:Masumi Murakami